ただ、注意しなくてはならないのは電力各社が4月以降の値上げを申請していることです。このため当面は物価の押し上げ圧力が継続し、2月以降も高止まりする可能性を念頭に置く必要があるでしょう。

■緩やかな回復に

 日本経済を展望するには、物価高による家計と企業の双方への影響を見る必要があります。家計に関しては、名目賃金は昨年後半以降、すでに2%近くの伸び率を確保していますが、それ以上に物価上昇率が高くなったため、実質賃金はマイナス圏で推移しています。こうした状況では家計の購買力が低下し、とりわけ低所得者層の消費者マインドが悪化します。

 ただ、今後は個人消費や設備投資などコロナ禍で抑えられていた内需の回復が日本経済を緩やかな回復に導くと見ています。企業マインドを示す企業景況感や企業収益も順調に回復し、設備投資も底堅い状況です。

 物価高は企業にも家計にも重しになっていますが、それよりも経済を挽回する勢いの方が強い、ということです。

 今後も物価高騰が続けば消費を押し下げる要因になり、低所得者層を中心に影響が懸念されます。しかし、現時点ではコロナ禍からの需要回復により、全体の個人消費はコロナ前の水準に近づいており、この傾向は当面続くと見ています。

 カギになるのは賃上げです。賃金はインフレにも金融政策にも景気の動向にもかかわるため非常に大事です。物価高騰は否定的に受け取られがちですが、近年の日本経済ではまれに見る現象であることも事実です。たとえ始まりがコストプッシュ型の物価上昇であっても、この先、欧米のような賃金上昇を伴う物価上昇につなげていくことができれば、日本経済の立て直しのチャンスになると思います。

(構成/編集部・渡辺豪)

AERA 2023年2月20日号

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