ジャーナリストの田原総一朗氏は、日本にAI研究者がいない理由を解説する。
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8月31日に、「朝まで生テレビ!」で、人工知能を取り上げて放送した。大変反応が強く、人工知能の便利さと怖さがはじめてわかったという視聴者が非常に多かった。
人工知能は私たちを幸せにするのか、それとも絶望のどん底に突き落とすのか。人工知能は天使か悪魔か、といった著作まで出版されている。
ところで、人工知能の権威である東大大学院の松尾豊特任准教授は、人工知能の最前線にいるのはグーグル、アップル、マイクロソフト、アマゾンなどアメリカ勢で、日本の企業は3周遅れだと表明した。
たしかに、日本の企業はどこも強い危機感を抱いていて、トヨタ、日立、パナソニック、三井住友銀行など、少なからぬ企業がメイン研究所をカリフォルニアのシリコンバレーに設置している。
トヨタの経営幹部は、“日本にはAIの研究者がほとんどいない。そして、スタンフォード大、ハーバード大、マサチューセッツ工科大などの研究者は日本に来てくれない。だから、シリコンバレーやボストンに研究所を設置したのだ”と説明した。
それに対して、パナソニックのシリコンバレーの研究所所長である馬場渉氏は、“スタンフォードやハーバードなどの研究者も日本に来たがらないのではない。日本社会が彼らを拒絶しているのだ”と語った。
日本社会がAI研究者たちを拒絶しているとはどういうことなのか。
馬場氏によると、日本社会、そして日本企業は、どこも失敗に対して不寛容すぎるのだというのである。
失敗に対して不寛容……。だから、日本の経営者たちも失敗が怖くてチャレンジできない。守りの経営になってしまう。そのために3周遅れになってしまったのだが、その不寛容さから、AI研究者たちは日本に来られない。AIは失敗を繰り返しながら開発するのであって、失敗を認めないということは、AIをシャットアウトすることだ、と指摘した。