東京を巨大台風が直撃した場合、250万人に一斉に避難してもらう。こんな計画が最近公表された。
東京都の墨田、江東、足立、葛飾、江戸川の「江東5区広域避難推進協議会」は、巨大台風や豪雨により大規模水害が起きた場合、最大約250万人の避難が必要になるとしている。
5区には「海抜ゼロメートル地帯」が広がっている。被害想定は最大で、ほぼ全住人の家が床上浸水してしまう。浸水の深さは最大10メートルに達し、2階建て住宅は水没の危険がある。堤防が決壊し、2週間以上も水が引かない地域もあるという。今年7月の西日本豪雨では、各地で大規模な浸水被害があった。首都でも同じようなことが起こりうる。
命を守るには早めに逃げることだが、今回公表された避難計画はこうだ。河川の氾濫(はんらん)が予測された場合、発生の2日前に、埼玉県や千葉県などを含め5区外への避難を住民に呼びかけ始める。1日前には「広域避難勧告」を発令。9時間前からはほかへの避難から、建物の高い階へ移る「垂直避難」に切り替える。
犠牲者ゼロを目指す計画だが、250万人もの人を一斉に避難させるのは非現実的だ。
埼玉県や千葉県などに広域避難を促すというが、どこの公共施設に向かえばいいのか具体的には決まっておらず、自治体間の協議もこれからだ。各自で親戚宅などに行けば良いとするが、身寄りのない人もいるし、交通手段も未定。5区のある担当者は、「正直なことを言えば、全員避難させる自信はない」と漏らす。
5区はこれから具体策を検討していくというが、いつまでに何を決めるかの方針さえ不明だ。
「国や都、交通機関などと協議することが多すぎて、見通しが立っていない。具体的に避難先を決めるだけでも、何年もかかりそうだ」(同じ担当者)
巨大台風はいつ来るかわからない。いま東京を直撃すれば、多くの人が支援を受けられずに行き場を失う“棄民”になる危険性がある。
元東京消防庁消防官で、防災アナリストの金子富夫さんはこう批判する。