しかも本が出たとたんに、TBSのプロデューサーからドラマ化したいと連絡がありました。そのプロデューサーは女性の方なんですけど、後で聞いたら、ボーイフレンドが「これすごく面白い。ドラマにすればいいんじゃない?」と勧めてくれたんだそうです。彼氏がミステリー好きで良かった(笑)。本当にラッキーが重なったおかげで、20年も続くシリーズになっていったんですよね。

 小説は、堂々と嘘を書けるので面白いんです。あるところから先は徹底して嘘をつき続ける覚悟というのが必要なんですけど、それができればとても楽しい。

 主人公の真島誠は、お金のないフリーターみたいなもんなんですけど、独立心が強くセンスのいい頭のいい子なんです。相手がお金持ちであっても貧しくても、誰に対してもフラットな姿勢で接する。そういう強さを持つかっこいい子です。

 彼のモデルは、僕の小学中学の同級生。その彼も誠という名前です。家がお風呂屋さんをやっていて広かったので、みんなでよく泊まりに行きました。誰もいない番台に交替で座ってみたりして。クリスマスには彼の家に集まって、ケーキを食べてパーティー的なことをやったり。4~5人で夜中の1時とか2時に街に散歩に出掛けて、おまわりさんに呼び止められたりしましたね。

 彼の名前の響きも良かったので、名字を1文字だけ変えて使用したんです。

 先日クラス会があって、久しぶりに誠君に会いました。もうすっかり頭がピカピカになっていましたね。でも彼はいまだに会社の若い子相手に「長瀬のモデルは俺だ」と言ってるんですって(笑)。

 それにしてももう20年ですか。いやあよく続きますね。

 小説はメディアとしての命を終えつつあります。これから20年、30年も経てば、アナログレコードやフィルムカメラ、真空管ラジオのように、趣味性の高いごくごく小さな市場として生き残ることになるでしょう。一部の好事家だけのものになると思うんですね。

 僕はもちろん本の世界が少しでも元気になればいいと思っています。本の世界の延命ができれば、と。そのためこれからも、最新のニュース性ある事件の中に古い「情」を入れた作品を書き続けていきたいと思っています。

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