「制作システムは少し違いますが、どの現場も、いいモノを作ろうという熱量は同じ。ただ、『アンナチュラル』では、初めて役を育てていく面白さを経験させてもらいました。10話、10時間かけて、役の人物像が豊かになっていく様を見せられた。テレビドラマならではの体験でした」
それにしても、一作にかける熱量は並ではない。
「困難に挑戦することが、役者をやる醍醐味だと思っているんです(笑)。それに、僕は若松孝二監督を師と仰いでいるので、社会に対して問題提起をしていく作品に参加することに、喜びを感じるほうでもある。でも、だからといって、メッセージ性の強い作品を選んで出演しているわけではありません。最近はあくまで、お話をいただいた順番を守って、出演するようにしています」
むしろ、俳優になりたての20代の頃のほうが、仕事を選んでいた。
「約10年前、30代前半で若松監督に出会って、親しくさせていただいているうち、監督に言われたんです。『作品を選ぶな、自分の可能性を自分で狭めるな』と。以来、仕事はオファーをいただいた順を守って、作品に入ったら、一本勝負でやっています。今作で共演した大杉漣さんにしても佐野史郎さんにしても、同時に三つも四つも役を抱えて、縫うように役を演じていく。それはすごいことだと思います。いつか僕も、あんなふうになれたらいいんですが」
(取材・文/菊地陽子)
※週刊朝日 2018年7月13日号