
今年1月に十代目を襲名した松本幸四郎さん。歌舞伎をはじめドラマ映画など幅広い分野で活躍中です。そうした活動の中で特に刺激を受けた人物が木村拓哉さんだといいます。なぜなのでしょう? 作家の林真理子さんが聞きました。
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林:たまにテレビとか映画にお出になると、楽しいですか。
松本:おもしろいですね。歌舞伎はしぐさがある程度決まっていますが、テレビドラマは日常生活とあまり変わらないので、自然の動きを拾ってくれたりして、感情のままにできるというおもしろさがあります。すごく刺激になりますね。
林:そのとき芸能界の人で仲良くなった人、いらっしゃるんですか。
松本:強烈な刺激を受けたのは木村拓哉君ですね。アイスホッケー部のドラマ(「プライド」2004年「月9」)でご一緒したんですが、「ついてこい!」というキャプテン的な役で、彼自身もそういうキャラクターなので、刺激を受けましたね。
林:たとえばどういう?
松本:髪形一つ、着るもの一つ、あらゆるものに神経を配るんです。たとえば自分の部屋のセットに置いてあるものの配置や、着メロなどが、その役らしいのか。常にそういうことを考えていたので、やっぱりすごい人なんだなと思いました。
林:私、染五郎さんの「アマデウス」を拝見しましたが、何年か前、日生劇場で男性二人の劇も見て……。
松本:日生は劇団☆新感線と、「アマデウス」と、「細川の血達磨(染模様恩愛御書)」という芝居で、愛之助君とボーイズラブの……。
林:そうそう、それを見ました。満席で、ファンの人が「ヤだァー!」「やめてーっ!」とか叫んで、ああいう劇、なかなかないです(笑)。
松本:僕も女性を好きなほうがいいです(笑)。あれはもともと大坂であった芝居を下敷きに、新しくつくり直したものなんです。
林:おもしろかったです。再演してほしいですけど、幸四郎の名前になっちゃったから難しいかな(笑)。
松本:いやいや、これからもやっていきたいと思ってます。
(構成/本誌・直木詩帆)
※週刊朝日 2018年7月6日号より抜粋