エプソンは「広告の掲載方針を改めて徹底する」としているが、企業ブランドを毀損しうる媒体を提示した代理店の責任も重い。このような倫理なき広告業界の一部が、ヘイトスピーチやフェイクニュース発信サイトの「ビジネス化」を促進させているからだ。
エプソンの対応については、おおむね好意的な評価を得ているようだ。メディアに批判的に取り上げられ、やむなく対応を迫られたわけではなく、一人のユーザーからの問い合わせに真摯に、そして即座に対応したことに称賛の声が上がっている。
さらに、保守速報に広告が掲載された別の企業への問い合わせを促す運動も活気づき、複数の企業が広告停止に踏み切っているという。保守速報に掲載される広告は目に見えて減少し、6月12日にはすべての広告が消えた。
欧米では不適切なサイトやコンテンツに広告が掲載されることで、企業や製品のブランド価値が損なわれるのではないかという「ブランドセーフティー」への懸念が高まっている。広告業界も掲載媒体を限定するホワイトリストや、掲載禁止媒体を設定するブラックリストを提供するなどの対策を進めている。
こうした動きを対岸の火事と見てきた日本の広告業界も、今後は対応を迫られることは必至。日本でもこの議論や対応が活発化することを期待したい。
※週刊朝日 2018年6月29日号