「最初『えっ、俺、ついにじいさん役をやるの?』と言ったらテレビ局の人が『波平さんはじいさんじゃありません。だって鶴太郎さんと同じ54歳なんですから』と。そうか、タラちゃんのおじいちゃんだけど、カツオとワカメという小学生のお父さんでもある。なんだ波平さん、現役の男じゃないかと思ったら、思いきりコミカルで元気に演じてやろうという気持ちが湧いてきたのです。どんな男性でも年をとります。そこで自分を老けた“おじさん!にするのも”じいさん“にするのも自分、緊張感を忘れない“男”として心身を保つのも自分なんです。そのことに気付いたとき、憑き物が落ちたように晴れやかな気持ちになりました」
更年期という長いトンネルを抜けたあと片岡さんはヨガと出会い、気持ちはさらに落ち着いてきたという。
「私が実践している『ヨーガ』は体操やエクササイズではなく、瞑想する準備のためのものです。お恥ずかしい話ですが、私は元々気性が激しく、とても感情的になりやすい人間でした。若いときはすぐに“怒り”に感情をのせていましたね。
『こらっ、何してるんだよ』と。でも57歳で毎朝ヨーガ、瞑想の時間を持つようになってから、自分の中に『静けさ』や『穏やかさ』が根付いてきたんですね。そうすると、普段たとえ何か余分なことが起きても感情がきれいにコントロールできるようになって」
片岡さんが毎日実践している“ヨーガの準備運動”を二つ教えてもらった。
「鼻から息を吸い、息を吐く『鼻呼吸』で、気持ちを無にして行ってみてください。そのあと5分くらいでもいいので静かな気持ちで瞑想してみてください。あぐらで、目を閉じ、深い呼吸に意識を集中するのです」
そのとき自分は自然界の一部にすぎないという意識を忘れずに。
「社会的な地位が上がってくると人間は勘違いしがちですが、『私はしょせん何者でもないのだ』という気持ちが一番大事なのです。更年期のピークのときに私がこういう気持ちを持てていたら……と、最近ふと思うんですよ」
(赤根千鶴子)
※週刊朝日 2018年6月8日号
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