それは安倍首相を守るためである。

 安倍首相は国会で、17年1月20日、つまり加計の獣医学部問題がすべて落着するまで、「何も知らなかった」と言い切っていて、もしも柳瀬氏が「指示あり」「報告した」などと言うと、安倍首相のウソがバレて、首相の座が危うくなるからである。

 だが、15年2月25日に加計理事長と会っていたとなると、安倍首相の国会での発言はウソだということになる。当然ながら、安倍首相は加計理事長と会っていたことを否定した。だが、国民の多くは安倍発言を信用していない。

 さらに、森友問題でも大変な事実が露呈した。安倍昭恵氏と問題の国有地の関わりが文書に記されていたことがわかった。こうなると、基本的には安倍首相はアウトである。

 だが、現在の野党には安倍首相を辞めさせる力はない。そして、自民党内にも今度の問題で安倍首相の責任を問うという声は起きていない。いってみれば、自民党議員のほとんどが安倍首相のイエスマンになっているのである。それに、5月21日発表の朝日新聞の世論調査では、安倍内閣の支持率は前回より5ポイント増の36%で、読売新聞では3ポイント増の42%と、いずれも増えている。安倍首相はこうした中で、強引な突破を図るだろう。国民の一人として、それをどう捉えればいいのか。

週刊朝日  2018年6月8日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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