妻:相撲界は家族のように弟子と一緒に住む。日々が修業でもありますから。最初は「親方のために」と頑張っていたけど、弟子が集まり始めたら、「この子たちのためにも!」とパワーアップしました。
夫:弟子のスカウトも最初は大変だった。ハワイ出身で郷土後援会などないし、「さて、どこに行こう」ってね。右に行っても左に行っても誰もいない(笑)。いろいろな人とお付き合いをして、自ら足を運んでお願いするしかなかった。
妻:今、日々の生活のなかで、ちゃんこを食べながら親方も一緒にウワーッと笑ってる声が聞こえると、安心する。親方がいない時でも、みんなの笑い声が聞こえると幸せなんです。
夫:おいおい、俺の悪口言ってるんじゃないか(笑)。
妻:毎日けいこは厳しいし、きついことを言われる。そんななかでも笑い声があるって、一緒に住んでるからこそですよね。
妻:私は親方の考えていることがわかるので弟子と一緒に話を聞いて、弟子にそれが伝わるように後でフォローする。それが私の役目かな。
夫:相撲はただのスポーツじゃない。弟子もただ強くすればいいんじゃない。将来、ちゃんとひとりの人間として生きていけるように育てなきゃいけない。だから本当に細かく言うよ。例えば、地方場所で部屋を空ける時などに電気のコードをコンセントに差しっぱなしにしていたら、「待機電力というものがあるんだぞ。抜け」と。今は、自分で電気代を払ってないから気にしない。でも、いずれは巣立ってゆくから。
妻:褒めることも私の役目です。例えば、弟子に買い物を頼むと、最初はおつりを渡すのにポケットからそのまま、レシートもぐちゃぐちゃ。でも、説明すると次からちゃんとできるから褒めます。どんな小さなことでも「ありがとう」と必ず言うことにしています。
(聞き手・佐藤祥子)
※元横綱・武蔵丸 妻の腎臓移植後に“泣き虫”になった理由につづく
※週刊朝日 2018年5月18日号より抜粋