室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
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(c)小田原ドラゴン
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 作家の室井佑月氏は、“破廉恥な権力者”が生まれる背景について持論を展開する。

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 高校3年のあたしの息子は、真っすぐだ。馬鹿正直っていうのかな。あたしが今までつき合った男は、捻くれた男ばかりだったが、息子を育てているうちに、

(じつはあたし、そういう男が好きだったんだな)

 と気づいた。

 だって、母親は息子を自分の好みの男となるべく、誘導しながら育てていく。

 アレが中学生のとき仲間とちょっとしたワルさをし、問題になったことがあった。担任の先生が、

「みんな目をつむれ。ワルさしたやつ、手を挙げろ」

 そういったら、ただ一人手を挙げたらしい。担任は、「そんな古典的な手に引っかかるやつがまだいたんだ」といって笑っていた。

 もちろん、正直にいったからといって、無罪放免にはならなかった。首根っこをつかまれ、職員室に連れていかれたそうだ。

 ま、中学生にもなって、くだらないワルさ(あ、イジメとかじゃないから。つまらんイタズラ)をしたアレが悪いのではあるが、あたしはその話を聞いたとき、妙に誇らしい気分になったのも事実。

 討論番組に出て、政権批判、権力者の批判などをすると、「文句あるなら対案を出せ!」などといわれる。あたしゃ、政治家じゃないし、そういうことをいわれる筋合いもないと思うが、じつはいわないだけで対案なんかとっくに出してる。

 小狡く、可愛げのない男に息子を育てていないのが、あたしの対案だったりする。

 今、ニュースを観ているとムカムカするじゃん。この国を仕切っている人々は、自分さえ良ければ、自分の立場だけ守れれば、自分だけ儲かれば、自分さえ仲間内で良い顔できれば、バレなきゃどんなエゲツないことしても……そんなやつらばっかりで。頭がそうだと裾野まで、そういう輩が多くなる。

 なぜ、一国の中枢にまでのぼり詰めた人たちがそうなった? 家柄か頭が、かなり良かった人たちである。どんな職業につくか、選べた人たちだ。

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