


「どんなに成功しても愛がなければ尊敬を得られず、愛すべき人にもなれない」
早稲田大学の大隈記念講堂で4月25日、満員の約1200人の聴衆を前に、小柄な男性がこう語りかけていた。「愛」の大切さを訴えたのは、中国のアリババグループ(阿里巴巴集団)のジャック・マー(馬雲)会長(53)だ。中国を代表する起業家で世界的大富豪としても知られる。
今回の来日では、早稲田大学のトークイベントに姿を見せた。鎌田薫総長は、「様々な分野でグローバルリーダーを目指しているすべての学生にとって、大きな刺激と数多くの教訓を与えるに違いない」とあいさつ。生の声をめったに聞けないジャック・マー氏の講演の意義を強調した。
ジャック・マー氏は起業家を志す若者らを前に、自分の経験を披露した。
「学問に邁進したい人は起業家にならないでしょう。起業家になる人は、学校の成績が良くない人かもしれない。学業でいい成績を収めれば大企業に就職することはできる。他に雇い手がいなかったから自分で起業するしかなかった」
早稲田大学に在籍する起業家からの質問にも答えた。どのような視点で事業を続けていけばいいかを問われると、三つの条件を掲げた。
「IQ(知能指数)」「EQ(心の知能指数)」「LQ(愛の知能指数)」
特に大切なのが冒頭の言葉にあるように「LQ」の愛だという。
「明日にすぐ結果が出るとは思わないでください。人に賛成されようが反対されようが、好かれようが嫌われようが、自分がこれだと思ったことに対して、それを良くしていくためにコミットしていくべきです。これが私の生き方そのものだ」
英語でうまくコミュニケーションする秘訣についての質問も出た。
「中国語もうまくないし、英語は大声でしゃべっているだけかもしれません。人に自分のことを理解してもらうよう、コミュニケーションのために臆さず話すのです。少なくとも、ドナルド・トランプが中国語をしゃべるより自分は上手いと思っていますよ」
と、冗談交じりに回答。観客からは、笑いと大きな拍手が沸き起こった。
起業家を目指す若者へはこうエールをおくった。