落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は、「神頼み」。
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我が家に神棚を吊って今年で10年になります。
御徒町の量販店『多慶屋』で大神宮様の御宮を買いました。店内をフラフラしてたら「神事グッズコーナー」を発見。あーいうとこでも御宮が買えることにまず驚きです。
「芸人なんだから神棚の一つも吊って、毎日出掛けに柏手を打って仕事に行けば、それらしいんじゃねえか?」とノリで購入。3万円也。ごく軽い気持ちで手を出してしまいました。いわば『ファッション信心』。配送料を惜しんで、約80×50×30㌢の決して小さくはない御宮を抱えて電車に乗ると、「この人、神社持ってる!!」と子供が指をさしてきました。「そうだよー。おじさんは神社を買っちゃったんだよー!」と心の中でハイタッチしましたが、電車内でむき出しの大神宮様はなかなかに目立つものです。
帰宅してまず気づいたのは、我が家に御宮を据える肝心の神棚がないこと。
とりあえずリビングの床に置いておきました。床にゴロゴロしてると私の目線の高さに御宮がドーンっと迫ってきます。大迫力。しばらく屋根を撫でたり、欄干を分解したり、扉を開けたり閉めたりして戯れていましたが、何かが足りない気がする。
「あ、御札を入れないといけないんじゃないか!!?」 当たり前です。『シルバニアファミリー』だって建物だけではつまらない。御宮のガワだけ拝んでもご利益はないはず。
近所の神社で御札を求めると「どちらの御札をご所望ですか?」と聞かれました。御宮には三つの戸があり、真ん中は天照皇大神宮、左手はその土地の氏神様、右手はおのおのが贔屓(ひいき)(?)にしている神様の御札を納めるらしいのです。知らなかった。とりあえず、真ん中と左には神様が無事ご入室。「贔屓の神様と言われてもなぁ……」
右はしばらく空室のまま、これから贔屓を見つけることにしました。それから神様とリビングで過ごすこと2週間。