このように、津田氏は、これからは基本公式では読み切れない再編が起こる可能性があるという。

「そういう再編の姿で言うと、大きい信金の中には『銀行』になりたがっている信金があることにも触れざるを得ません。現在、預金量が1兆円を超えている信金が全国で35ほどあります。今まで『銀行と信金』という業態を超えた合併は例がありませんが、大きな信金が小さな銀行をのみ込む可能性は十分あるとみます。小さな銀行と合併し、存続金融機関を銀行にすれば済む話です。『名を捨てて実を取る』戦略と言ってもいい。法律的には、何ら禁止されていることではありません」

 常識では考えられないことが起こるのが世の中というものだ。今から30年以上前で、事件がらみだったが、住友銀行(現・三井住友銀行)が平和相互銀行を救済合併したこともある。

「首都圏については、信金の数が全国一多いので多様な可能性があります。業界を長年リードしてきた城南信金なども例外ではありません。13年前に4金庫合併で城北信金が誕生したときのように大きく、驚天動地の合併が起こるかもしれません。予想もつかないほどの『カオス』状態にあるといっていいでしょう」

 津田氏は東京のほかにも、これまでの基本公式にあてはまらない再編が起こると予想する。

「一つでもそういう再編が起こると、あとは『何でもあり』になるでしょう」

 動きが止まっているかに見える地銀も、水面下では「あひるの水かき」をしているのだろう。信金とあわせて、地域金融機関の「最終形」は、どのようなものになるのだろうか。(本誌・首藤由之)

週刊朝日 2017年11月17日号より抜粋

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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