一戸建てに住んでいる人は、生活の場を1階へまとめてしまうことをお勧めする。理由は、広すぎて管理しにくいからだ。すべてが見渡せるようにワンルーム化する。
私は部屋全体が見渡せるように、できることなら多少の費用をかけてリフォームし、ワンルーム化することをお勧めしている(イラスト図参照)。
動線を短く、全体が見渡せるというのが、片づけには効果的だからだ。
あちらこちらに置きっぱなしのモノが目に入りやすくなるので、元の定位置に戻そうとする力学が働く。
また、料理にとっても見渡せることは有効だ。
暗くて狭い台所で、孤独に料理するのは気が進まないもの。居間の一部が台所になれば、楽しく料理ができ、掃除も同様だ。
部屋全体が一続きであれば、掃除機かけも、床拭きもとても楽になる。
そしてバリアフリーにはあえてしない。
1階をリフォームするついでに、老化を見越してバリアフリーにし床の段差をなくす、という考えもあるが、あまりお勧めできない。京都美術工芸大学の高田光雄教授はこうアドバイスする。
「個人差はありますが、まだ足腰が丈夫なうちは、段差は足を上げる運動の良いきっかけとなり、身体機能の維持を日常的に支えてくれます。バリアフリー化は準備だけしておき、いよいよ足が上がらなくなってきた、と自覚したときにやりましょう。ただし、転倒防止のため、段差のあるところなどには、手すりはつけておいたほうがいいでしょう。ただし本来の老化防止策は外出を促進することです」
さて、最後に大事な心構えを紹介する。
【1】老化の3段階が避けられない必然であることを心に刻むこと
【2】その上で、積極的に第1段階に長くとどまることを目標としつつ、第2段階に入ってもできる家事の習慣を形成する
【3】一度に完璧を目指さず、簡単にできることから一つずつ順番に時間をかけてやる。短くて1年、長ければ一生続く努力を楽しみとしよう
老いは、老いを生き延びること自体が立派な目標であることを、自覚すべきではないだろうか。
※週刊朝日 2017年11月3日号