毛受氏は、日本が直面する危機を『限界国家 人口減少で日本が迫られる最終選択』(朝日新書)にまとめた。
かつて、農村部などの過疎地を指す言葉として「限界集落」という言葉がよく使われた。65歳以上の高齢者が過半数を占め、若者は地域の外に出て少子化が進み、冠婚葬祭などの行事もままならない。こうした姿は今後集落にとどまらず、都市部にも及び、日本全体が「限界国家」になるという。
「人口の将来予測は精度が高い。日本は10年代に273万人減りますが、減少傾向はその後さらに加速し、20年代に620万人、30年代に820万人、40年代に900万人が減少します」(毛受氏)
25年後の人口は、現在より1740万人少ない1億913万人と推計されている。減少分は、九州7県と四国4県の人口より多い。四半世紀で11県分の人口が日本から“消える”のだ。
人口が減れば、上下水道などのインフラ、病院や商店など社会生活に必要な施設の維持も難しくなる。
総務省が7月19日に発表した「買物弱者対策に関する実態調査」によると、自宅近くにスーパーなどがなく、買い物に困る「買い物難民」は、現在約700万人いる。頼みの綱となるのは移動販売や宅配サービスだが、こうした買い物支援業者の45%が赤字経営。事業継続を断念した業者も12%あったという。
「今後は、農村部だけではなく、大都市やベッドタウン、地方都市でも問題が深刻化する可能性があると指摘されています。移動販売や宅配サービスは、運転手の確保や燃料費の負担が大きい。一人あたりの買い物の金額も低く、利益を出すのが難しいのが実情です」(総務省行政評価局)
人口減少に付随する問題は、これから次々に表面化することになる。
年表は、超少子高齢化社会で日本がどのように変わっていくかをまとめたものだ。22年には団塊世代が75歳の後期高齢者となる。26年ごろには認知症患者が800万人になる。