岡田惠和(おかだ・よしかず)/1959年、東京都生まれ。雑誌のライターなどを経て、ドラマ「香港から来た女」(1990年)で脚本家デビュー。NHK連続テレビ小説「ちゅらさん」(2001年)で橋田賞、向田邦子賞を受賞するなど、受賞歴多数。近年の主な作品に「おひさま」(11年)、「泣くな、はらちゃん」(13年)、「私という運命について」(14年)、「ど根性ガエル」(15年)、「奇跡の人」(16年)など。現在、脚本を手掛けるNHK連続テレビ小説「ひよっこ」が放送中。(撮影/写真部・大野洋介)
岡田惠和(おかだ・よしかず)/1959年、東京都生まれ。雑誌のライターなどを経て、ドラマ「香港から来た女」(1990年)で脚本家デビュー。NHK連続テレビ小説「ちゅらさん」(2001年)で橋田賞、向田邦子賞を受賞するなど、受賞歴多数。近年の主な作品に「おひさま」(11年)、「泣くな、はらちゃん」(13年)、「私という運命について」(14年)、「ど根性ガエル」(15年)、「奇跡の人」(16年)など。現在、脚本を手掛けるNHK連続テレビ小説「ひよっこ」が放送中。(撮影/写真部・大野洋介)
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 視聴率が連日20%台を突破するなど、ますます注目を集めている放送中のNHK朝ドラ「ひよっこ」。毎朝早起きして、楽しみに見ているという作家の林真理子さんが、脚本家・岡田惠和さんにその舞台裏を伺いました。

【写真・有村架純の魅惑の二の腕】

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林:有村架純さんは、岡田さんの「ぜひ」というリクエストだったんでしょう?

岡田:はい、そうです。朝ドラはオーディションのイメージがありますよね。17、18歳の人を中心に書くなら真っさらな人でもいいんですが、今回のように18歳ぐらいから25歳ぐらいまでの話にちょうどいい役者さんで、実力がある人は、すでにある程度キャリアがあることも多いんですよ。

林:ええ。

岡田:特に工場の話は、ヒロインが主役然とした描かれ方ではない、ある種の群像劇です。その中でちゃんと芝居ができて引きつけられる人じゃないと、「みね子、いたっけ?」となってしまう可能性があります。彼女だとそういう心配がないのです。

林:なるほど。

岡田:彼女、人の話を聞く芝居が上手ですよね。台本上で中心に描かれていなくても、きちんと「みね子」でいられる演技は、ある程度の経験がないと厳しいと思っていたんです。基本的には、朝ドラのヒロインになるのは一生に1回。今、彼女に演じてもらいたいなと思いました。

林:毎朝心に残るセリフが必ずあるんですよ。「すずふり亭」(みね子が働く赤坂の洋食屋)のオーナーの鈴子さん(宮本信子)が、「仕事は、時間中は精いっぱいやって、終わったら忘れる。でないと、いい仕事はできないよ」って言うじゃないですか。今、ああいうことを言ってくれる大人はいないし、朝ドラは人生訓をたれるわけじゃないけど、聞いてよかったと思うセリフがあるかないかが、とても重要なことじゃないかと思うんです。

岡田:大人に若い子が憧れる職場だと、若い子は自由に成長します。後輩が入ってきたときにみね子ちゃんが同じことを繰り返してやると、それだけで世界はうまくいくんじゃないかという感じがしますね。

林:ああいうオーナーさんがいたらいいなと思いますよ。仕事をちゃんと教えてくれて。

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