「言ったことがばれたら怖い、という心理があるみたいです。あごをしゃくりながら、顧問はヤンキーのようにしゃべる。恐怖で支配するスタイルです」

 2013年1月、大阪・桜宮高バスケットボール部主将が顧問の暴力などを理由に自殺したことが明らかになって以降、スポーツ界全体が暴力的指導の根絶を目指しているが、一部の顧問には馬耳東風のようだ。

「それが、外からは『熱くていい先生』と評価される。こういう規範意識の薄い先生と濃密な時間を過ごすことで、息子の人格に影響が出ないか不安です」と保護者は明かした。

 スポーツ庁は昨年12月、全国体力調査で調べた中学の運動部活動の休養日設定状況を公表した。

 それによると、学校の決まりとして休養日を設けていない学校が22.4%、土日に設けていない学校が42.6%あった。こうした学校では、部活動指導に燃える顧問が、その裁量でいくらでもできることになる。

 部活動のやりすぎは以前から指摘されてきた。1997年には当時の文部省の有識者会議で、「中学校では週2日以上」「高校では週1日以上」など、運動部における休養日の設定例のほか、練習時間についても、「長くても平日は2~3時間以内、土日も3~4時間以内をめどとする」と、子どものゆとりを確保するよう提言していた。

 だが、この20年間、実態はさほど変わらない。今年1月には、文科省が改めて、運動部の部活動で休養日を設けるよう求める通知を全国の教育委員会などに出した。

 週刊朝日では中学高校の部活動の現状について、アンケートを募った(注)。

 中学生の母親(40代)は「外部のコーチの話が長いらしく、いつも完全下校の時間を過ぎる。真夏の炎天下、休憩時間と水分を十分にとらせない。年配の方で、休憩や水分をとるのは、『怠けている』『弱い』という考えのようです」と書いた。

 長時間の拘束のみならず、一歩間違えれば、大きな事故につながりかねない非科学的なやり方が今も横行している。

 運動部だけではない。中学生の子どもが吹奏楽部員という母親(40代)は「まともに休日がない。朝練に始まり、練習後に帰宅してから授業の課題を深夜までやり、慢性的な寝不足。『休みがあったら何をしたい?』と聞くと、『とにかく寝たい』としか言いません」と回答した。

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