だがこの「籠池からの手紙」はいささか読解し難い。なぜなら手紙の内容が、「50年定借として早い時期に買い取るという形に契約変更したい」「学校の用地が半値で借りられたらありがたい」「本来なら平成27年度予算で返ってくるはずの立て替え払いが、予算化されていなかったので早急に予算化してもらいたい」と、手前勝手な要求事項だけを無味乾燥に箇条書きしたものにすぎないからだ。

 冒頭の挨拶や自己紹介、依頼内容の概要など、手紙らしい内容は一切ない。ただただ要求内容が羅列されるだけ。「籠池氏が何をしている人か」「なんでこんな手紙を送りつけてきたのか」という予備知識がなければ、到底、理解できるような代物ではない。しかしながら、これに対する返答である谷氏からのfaxは、予備知識のない人間であれば読解不可能なはずの「籠池からの手紙」を見事に読み込み、その要求事項の全てに遺漏なく的確に返答しており、先述のように「工事立替費の次年度での予算化」という「籠池の要求」を完全に満たす回答まである。ここまで円滑なコミュニケーションが成立するためには、「籠池が手紙を送る意図」を、谷氏に「解説」する人物がどうしても必要だ。

 籠池氏は証人喚問で「一昨年10月、お願いがあって昭恵夫人に電話し、留守電に残した」と証言している。そしてこのエピソード自体は昭恵夫人本人も、フェイスブックで発表したコメントの中で認めている。ならば、「籠池の意図」を谷氏に「解説」する役割は、昭恵夫人が担当したと解釈するのが自然だろう。つまり昭恵夫人は「籠池の意図」を正確に理解し、その内容を財務省に伝えるよう、自分の秘書である谷査恵子に命じたとしか言いようがないのだ。これでは政治家が行う「陳情処理」や「口利き」と全く同じではないか。

 このように「籠池からの手紙」と谷氏からのfaxの両方を並べ読み比べてみれば、「昭恵夫人による土地取引への関与」の実態が、誰の目にも明らかになる。

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