「演技に注文を出されるでもなく、『はい、OK』『はい、OK』と、撮影がすんなり終わっていくんです。これでいいのかなと思ったりもしましたが、彼がOKを出すならと、スタッフみんなが信じていました」
日活の若手スターたちにも影響を与えた。66年の「東京流れ者」で主演した渡哲也さんは、当時の思い出をこう語る。
「デビューの翌年の作品で、芝居の“し”の字も知らなかったんです。『寝てろ』と言われれば寝て、『口を開けろ』と言われれば開けてと監督に言われるままに演じて、本当にたくさんのことを教わりました。『流れ者には女はいらない』というセリフは今でもはっきりと覚えています」
高橋英樹さんも、若手時代に「けんかえれじい」で主演を務め、その訃報にコメントを寄せた。
「日活時代に『けんかえれじい』をはじめ、さまざまな作品でお世話になりました。ユニークな演出方法で、当時の若い私にとりましてはとても勉強になりました」
数々の名優を育て上げ、尊敬を集めた鈴木さん。空の上でも、ひょうひょうとしていることだろう。
※週刊朝日 2017年3月10日号