漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、「スーパーサラリーマン左江内氏」(日本テレビ系 土曜21:00~)について、アイドル=ジャイアン説を唱える。
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中年サラリーマン左江内(堤真一)が、ひょんなことからスーパーマンになるはめに。原作は藤子・F・不二雄の漫画で、脚本・演出は「勇者ヨシヒコ」シリーズの福田雄一だ。
全編に流れる深夜ドラマ的まったり空気。「ヨシヒコ」レギュラー陣のムロツヨシや佐藤二朗が、セリフなのか、フリートークなのか、全力で空回りする。これ、もう脳が眠りかけてる深夜だと、すごく温かい気持ちで受け入れられてたのに、なぜかしら。夜9時台だと、「滑ったその先にある世界って、何だろう」などと余計なことを考えがち。
そんなゆる~い世界の中で、唯一殺伐としているのが、左江内の妻・円子(小泉今日子)。夫が帰宅すれば、「なんで帰ってきたの!?」と、いきなり喧嘩ごしで、こたつにスッポリはまったまま「家事おなしゃーす(お願いします)」と、指令を飛ばす。ちょっとでも口答えしようものなら、「ハァ?」と逆ギレする見事なヤンキーばばぁっぷり。
藤子キャラで言えば、まさに誰もさからえないジャイアン。ワガママで絶対的な強権を発動し、常にのび太のハートを踏みにじり、しばしばリサイタルを開くジャイアンだ。
のび太=ファンと考えると、アイドルってジャイアンなんじゃない? もうみんなジャイアンの言いなりじゃない?(ちなみに左江内も鬼嫁を溺愛&下僕)。ジャイアンをもっともリアルに演じられるのはアイドル。ほら、トヨタのCM「ドラえもん」シリーズでジャイ子役を演じていたのも、前田敦子だったし。
本作は、キョンキョンの娘役に元AKB48の島崎遥香、左江内の部下役に元ももいろクローバーの早見あかりって、なにかとアイドルが勢ぞろい。3話のエピソードでは、アイドルオーディションに落選した島崎が、自虐的に毒づく。
「もしかしたら俺でも付き合えるんじゃね?的な身近な女じゃなきゃ(アイドルは)無理なんだろうなぁ。あー、昔みたいにアイドルはうんこしないって思われた時代がこねえかなー?」
その「うんこしないアイドル」時代から、いち早く抜け出して、「うんこするアイドル=リアル」を提示したのが、キョンキョンではなかったか。時は流れ、ジャイアン化したアイドルに、「総選挙の投票おなしゃーす」って言われたら、のび太はさからえないよね。
※週刊朝日 2017年2月24日号