「自分で“成長”を自覚しているわけではないですよ(笑)。そこまでうぬぼれてはいないけれど、僕は、12年と14年に、蜷川幸雄さんのシェイクスピアの舞台に立っているんです。1回目の“シンベリン”の時は無我夢中で何が何だかわからないまま終わってしまったんですが、2回目の“ジュリアス・シーザー”では、『すごいよ、2作目でこんなに成長するなんて』と、一応褒めていただけたので。何事も、経験を積んだり難しいものにチャレンジしたりすれば、初めての時よりはマシになるものなんでしょう、きっと(笑)」

 50代になってからの発見もあった。若い、イケイケの時よりも、物事に感激しやすくなっている自分に気づいたのだ。そのふとしたことに心が揺れ動く感覚は、10代の思春期の頃と近いようにも感じている。

「30代ぐらいの頃は、物事をクールにドライに考えようとする傾向があったと思うんです。でも、今は一周回って、人の優しさを素直に受け入れられたり、自然の変化に敏感になったり。何より涙もろくなってます(笑)。それをただ気が弱くなっているととるか、純化しているととるか。僕はせっかくなら後者だと思いたい(笑)。20年ぐらい前、大滝秀治さんと共演した時、コミカルな老人の役を子供のようにこだわりと情熱を持って演じていらして、すごく素敵で。自分が60代後半になった時も、あんなふうに芝居が大好きで、ピュアでいられたら、と。あの時の大滝さんに、今も憧れています」

週刊朝日  2017年2月3日号

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