阿部寛/1964年生まれ。神奈川県出身。87年俳優デビュー。テレビドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。映画は、是枝裕和作品に多く出演するほか、「トリック劇場版」シリーズや「テルマエ・ロマエ」など代表作多数(ヘアメイク/丸山良、スタイリスト/土屋詩童、撮影/写真部・小原雄輝)
阿部寛/1964年生まれ。神奈川県出身。87年俳優デビュー。テレビドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。映画は、是枝裕和作品に多く出演するほか、「トリック劇場版」シリーズや「テルマエ・ロマエ」など代表作多数(ヘアメイク/丸山良、スタイリスト/土屋詩童、撮影/写真部・小原雄輝)
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 5年後、自分がどうなっているかわからない。だから、一作一作に全力で取り組むしかない。次回作を待たれるスター俳優でありながら、今も、そんな危機感を抱えていると、阿部寛さんはいう。

「20代の頃、雑誌メンズノンノのモデルという華やかな世界に足を踏み入れて、そこでキャリアを積んでも、俳優業に進出したら一瞬で無名になった(苦笑)。僕が芝居を面白いと思えるようになったのは、30代になってからです。しかも、僕が30代の頃は60代で活躍されている俳優さんは、今よりもずっと少なかった。自分がずっと芝居の世界で生き残っていける保証なんかどこにもない。決まっているのは、2年先の仕事までです。だから、目の前のことを必死でやるしかないと思って」

 2016年は是枝裕和監督の「海よりもまだ深く」や、東野圭吾さん原作の「疾風ロンド」など、情けなかったりどこかコミカルだったりする中年男を、スクリーンの中でとても人間臭く演じていた。脚本家の遊川(ゆかわ)和彦さんがメガホンを取った「恋妻家(こいさいか)宮本」では50歳にして一人息子が独立し、妻との二人暮らしを始める中学教師の役。そこには、50歳を過ぎて人として成長していく男の姿が描かれているが、阿部さん自身、芝居を通じて、“人はいくつになっても成長できる”ことを実感することがあるそうだ。

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