豊洲市場の空撮。道で区切られた手前左側が6街区(水産仲卸売場棟)、右側が7街区(水産卸売場棟)。7街区の奥が5街区(青果棟)、その左が4街区 (c)朝日新聞社
豊洲市場の空撮。道で区切られた手前左側が6街区(水産仲卸売場棟)、右側が7街区(水産卸売場棟)。7街区の奥が5街区(青果棟)、その左が4街区 (c)朝日新聞社
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 地下空間の水から環境基準の79倍のベンゼンが検出されたことで騒然とする豊洲新市場。1月20日、小池知事は定例会見で意外な一手を打ち出した。

 東京都が費やした市場用地購入費用約578億円を石原慎太郎元都知事に払わせることを求めて都民から起こされている住民訴訟について、都の弁護団を入れ替えて方針転換を検討するというのである。

「石原元知事に責任があるかどうか、あるとすれば東京都に与えた損害の額が一体どのくらいか、その点を明確にしていくということでございます」(小池氏)

 都が石原氏を訴える衝撃の展開もあり得るのだ。

 それにしても不可解なのは、過去に出なかった高い数値が突如として検出されたことだ。元日本環境学会会長の畑明郎(あきお)・元大阪市立大大学院教授はこう語る。

「数値がここまで急上昇するとは考えづらく、過去の結果がおかしかったのでは。汚染は地下約10メートルまであったが、土をすべて入れ替えたのは深さ2メートルまで。深部の汚染は残り、地下水位の上昇などで地表近くが再汚染された疑いがあります」

 地下の汚染は市場の安全に影響しないという声もあるが、畑氏は反論する。

「ベンゼンやシアンは揮発性で建物の隙間から入ってくる。豊洲の地盤はもろく東日本大震災では液状化現象で泥水が噴出した。長い目で見て安全とは言えない」

 なぜ都はそんな土地を買ったのか。本誌は都への情報公開請求で1998年9月から2000年10月まで行われた、都と当時の地権者だった東京ガスの交渉の記録を入手。以下、交渉の経緯を振り返る。

 最初の交渉は青島幸男都知事時代の98年9月。豊洲が移転先候補だという都の説明に、地権者の東ガス側は〈土地を売る気はない〉と、強く拒絶していた。

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