空き家バンクで見つけた自宅に住む夫婦(山口県阿武町) (c)朝日新聞社
空き家バンクで見つけた自宅に住む夫婦(山口県阿武町) (c)朝日新聞社

 国土交通省が14年に実施した空き家実態調査によると、「空き家にしておく理由」として「物置に必要」44.9%、「将来自分や親族が使う」36.4%、「捨てられないものがある」32.8%、「リフォーム費用をかけたくない」20.6%、「資産として保有」10.0%──などとなった。

 ここに目をつけ、最近ユニークな試みを始めたのがIT(情報技術)ベンチャーの「うるる」(東京都)だ。星知也社長は言う。

「空き家問題解決には整理会社や金融機関、リフォーム会社、相続診断士、倉庫会社など多様な業種の助けが必要で、1業種のみで解決するにはハードルが高い。ワンストップでソリューション提供できることが望ましいと考えました」

 そこで、16年9月に各種専門家に相談できる体制を構築した「空き家所有者」と「各分野の専門家」が出会えるウェブサイト「空き家手帳」を誕生させた。サイトのトップページで、空き家所有者の悩みについての相談を「空き家相談ボード」に無料で直接投稿でき、専門家が回答する仕組みを導入。双方の交流を促す。参考になった回答をした専門家には所有者が直接、電話やメールで相談や問い合わせができ、直接マッチングも可能となっている。

 サービス開始から間もないが、成果が出始めている。

「茨城県牛久市の30代の男性から相談があった。4LDKで190平方メートルの築36年の一戸建て物件。査定では150万円にしかならないと言われたそうですが、空き家手帳に掲載した直後、ある女性から、『このような物件を探してました』と書き込みがあったそうです。現在、交渉中ですが、250万円で買ってもいいとのこと。男性、女性ともに『不動産屋の仲介よりも直接やり取りしたほうがメリットがある』と喜んでます」(星氏)

 9月にうるるが独自に実施した16年空き家バンク運営実態調査によると、把握できた全国の空き家バンクは750自治体。日本にある全自治体の約44%に上った。物件登録数の累計は平均47.6件。これは空き家数820万戸の0.4%に過ぎない。国交省は17年度、空き家バンクの情報を集約した全国版サイトを立ち上げる予定だが、「民間会社だったら、とっくに潰れている。自治体任せの国が動いても無理だと思う」(同)という。

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