それに対して、専門委員から、トンネル天井部の地層は<ボロボロの岩であった><外圧を加えるとどんな亀裂が入るか><見た限り、かなりボロボロの(地)層なので水位が下がり沈下が起こっている可能性は否定できない><(掘削は)注意深く行わないといけない。かなり危ないのではないか>などと、次々と危険視するような意見が出た。
すると委員長が<だから下げたのではないか>とトンネル天井部の位置を下げることで回避できるという助け舟のような発言を述べた。
しかし、別の委員から<下げたとしても心配><地表面沈下につながる>と今回の陥没事故を予見するような発言まで出ていたのだ。
このようなトンネル工事では、地表が一定の割合で沈下することが予想されるため、どの程度の沈下であれば許容できるのか、その値を数値化して、目安にして工事が進められる。
今回の工事による地盤沈下を想定する、地表面沈下の管理値は、30ミリと設定されていた。
だが、陥没事故現場から数十メートル離れた場所では、沈下量が30ミリでは収まらないので、50ミリにしたいという提案がされていた。すると、専門委員から、<管理値がなんのためにあるのか分からなくなる><高規格道路では10ミリ沈下するとアウト><恣意的な管理値の動かし方になる>と厳しい指摘が次々と出ていた。また、地下鉄工事というインフラ建設だけに、<公共のものなどがあった場合は慎重に考えたほうがよい>と意見する委員もいた。
だが、福岡市交通局は、<長期的な沈下はないように見える><現場も沈下による影響は見受けられない><安全確認をして施工していきたい>と委員の危惧する意見を押し切った。最後に委員長も<この場で承認したい>と述べて、認めていた。
このようにトンネル工事の危険性を指摘する声はこの日以外の会議でもあった。例えば、15年9月1日の第5回の会議でも、地下鉄の通る本坑に通じる工事用の連絡坑について、当初より深さを3メートル下げたことで小さな崩落があった、と専門委員の視察で報告されていた。