「娘は昨年12月25日、会社の借り上げ社宅から投身し、自らの命を絶ちました。『大好きで大切なお母さん。さようなら、ありがとう』というメールを残して亡くなりました」
壇上の高橋幸美さん(53)は、そう語りはじめた。
自ら命を絶ったまな娘は大手広告会社の電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24)。11月9日、東京都内で開かれた厚生労働省主催の「過労死等防止対策推進シンポジウム」で、幸美さんが初めてその胸中を明かした。
東京大学時代、週刊朝日でアルバイトをしていたまつりさん。筆者(今西)に送られてきたメールには、
〈週刊朝日では「この人が上司なら納得感があるなぁ」と心から思える大人に出会い、働く姿から教えてもらったこと全てが、私の糧になっていると思います。頑張ります〉
と電通入社が決まって期待に胸をふくらませる様子が書かれていた。幸美さんもシンポジウムで、
「日本のトップの企業で、国を動かすような、さまざまなコンテンツの作成にかかわっていきたい。自分の能力を発揮して、社会に貢献したいと夢を語っていました」
とスピーチした。だが、電通で配属されたインターネット関連部署では長時間労働による過労が積み重なっていく。そんな状況を幸美さんは、こう語った。
「(昨年)10月に本採用になると土日出勤、朝5時帰宅という日もあり、『こんなにつらいと思わなかった。今週10時間しか寝ていない。会社やめたい。休職するか退職するか自分で決めるのでお母さんも口出ししないでね』と言っていました」