ところが、今回のフェリー購入問題が報道されて以降、原発に関する議論はかき消され、フェリー問題だけが議論の対象となってしまった。私が立候補したままでは県民の生命、安全、健康をどうするかを語る選挙にならない。2月に立候補表明したときは、これほどひどい環境ではありませんでしたが、知事選が近づくほど、そして私が勝つ可能性が高まるほど、状況が悪化しました。今後も何があるかわからない。

──知事として別のメディアを通して訴えることもできたのでは。

 地元メディアは記者クラブ制度の中での調和を優先されるのか、概しておとなしくされています。県のホームページで見解を出しても、ほとんど県民に伝わらない。アクセス数はあっても3千ぐらい。やはり毎日約45万部を超える部数を持つ県紙、新潟日報の力は大きい。

 皮肉なことに、今回「撤退する」と表明をして急に全国区のメディアから注目され、追いかけられ、ようやく問題も報じていただけるようになった。ローカルテレビの生放送にも出られました。「撤退を撤回して」との声もどんどん来ています。「頼むから戦ってくれ」と。ただこのまま選挙戦に突入したとしても、毎日、船の問題に関する記事が出るだけになってしまいませんか? 訴えが届かない中で、県職員も疲弊している。未明まで懸命に準備し、答弁しても、翌日には「県が虚偽答弁か」などと報道される状況です。私が知事であることで、周囲に余分な負荷もかかっている。

──これまでご自身で提起してきた原発の安全性などの問題はどうなりますか。

 周囲に迷惑をかけてしまうので私はやらないほうがいいでしょう。まだ罠があるかもしれない。あれだけ原子力防災を一生懸命言っている知事のところで、ヨウ素剤の備蓄がされていなかった等、本来はあり得ない事態も起きているぐらいです。新潟日報は県では法で定められた福祉計画が上層部の意向も影響して作られていないと指摘しました。私は福祉サービスがこのままだと足りないので、検討しましょうよ、と確かに言いました。でもそれっきり上がってこなかった。仮に知事が、「作るな」と指示したならば、ふつう職員は責任解除するために起案を回しますよ。今回はこういうことになったので作らないことにしますと、起案を回してハンコをとりますよ。それもやっていない。こういうことが次々起きる。そのたびに職員に負荷がかかり、本来議論すべきところも議論できない。一人だったら闘ったと思いますが、もう限界。周りの人を巻き込むのは避けたいと思う。

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