上野千鶴子うえの・ちづこ/1948年生まれ。社会学者。東京大学名誉教授、認定NPO法人WAN理事長。女性学・ジェンダー研究のパイオニア。介護とケア、終末期の問題に研究範囲を広げ、『おひとりさまの最期』(朝日新聞出版)、『上野千鶴子が聞く 小笠原先生、ひとりで家で死ねますか?』(同、小笠原文雄氏との共著)など著書多数(撮影/写真部・長谷川唯)
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上野千鶴子
うえの・ちづこ/1948年生まれ。社会学者。東京大学名誉教授、認定NPO法人WAN理事長。女性学・ジェンダー研究のパイオニア。介護とケア、終末期の問題に研究範囲を広げ、『おひとりさまの最期』(朝日新聞出版)、『上野千鶴子が聞く 小笠原先生、ひとりで家で死ねますか?』(同、小笠原文雄氏との共著)など著書多数(撮影/写真部・長谷川唯)
帯津良一おびつ・りょういち/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。『死を生きる。』(朝日新聞出版)、『がん患者を治す力』(朝日文庫)など多数の著書がある(撮影/写真部・松永卓也)
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帯津良一
おびつ・りょういち/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。『死を生きる。』(朝日新聞出版)、『がん患者を治す力』(朝日文庫)など多数の著書がある(撮影/写真部・松永卓也)

 がん診療とともに、養生にも造詣が深い名医・帯津良一先生(80)と養生の達人たちとの問答、今回のお相手は『おひとりさまの最期』の著書がある社会学者の上野千鶴子さん(67)。「おひとりさま」同士の対談で、上野さんは「最後はボケそう」と心情を明かした。

*  *  *

帯津さん(以下、帯):上野さんは東大の教授をやってらしたわけですが、大変でしたか。養老孟司さんとも対談したんですが、養老さんは「東大教授はもうしみじみ嫌になった」って言ってました。

上野さん(以下、上):私も定年より、2年早く辞めました。いろいろありましたが、この程度のことは大したストレスではないって思ってました。ところが、東大を辞めてみたら、まわりが、顔つきがよくなったって言うんです。なくなって初めて、そうか、あれがストレスだったのか、と(笑)。

帯:となると、今はとてもいい感じで過ごされているわけですか。

上:忙しいのは変わりませんが、ストレスフリーですね。今は自分がやりたいことだけやっていますから。

帯:体調はいかがですか。

上:いいですね。女の60代は更年期も終わって、いい年代かもしれないですね。帯津先生も60代がよかったと書かれていましたね。

帯:よかったですよ。60代から女性にもてるようになりました(笑)。70代もよかったですけど。健康のために何かやっていらっしゃるんですか。

上:それが何もやっていないんです。健康法みたいなものはまるでなくて、そういう取材をされると困ってしまうんです。

帯:でも、病気とは縁がなさそうですよね。

上:私は子どものときから丈夫ではなかったので、すぐに体にブレーキがかかるんですね。すぐ喉が腫れたり、口内炎になったり、休みになると熱が出たり。だから頑張りがきかない。それがいいんじゃないでしょうか。

 過労死とか突然死といった体力のある人の死に方はできないから、体のあちこちに小さな故障を抱えながら、それをだましだまし、ぐずぐずと長生きしてしまうという「一病息災」型ですね。で、最後はボケそうな気がしてます。

帯:ボケるんですか。

上:はい。なぜか、ボケる人は元教師が多いような気がします(笑)。まわりで、まさかあの人がと思う人がボケるのを見て、誰も老いからは逃れられない、みんな階段を下りていくんだなあ、いずれは自分にも来るんだって思っています。そのときに、子どもがいないおひとりさまの私はどうしようってずっと考えてきたんです。

週刊朝日  2016年6月3日号より抜粋