日本映画界の鬼才・園子温(54)を、かつて鬼才と呼ばれた監督の息子が撮った――。大島渚氏の次男・新(あらた)監督(46)が完成させたドキュメンタリー映画「園子温という生きもの」(2016年5月14日公開)。父と子の在り方、映画への思い……多くの接点を持つ二人が向き合った。
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――園さん、ご自身の姿をスクリーンでご覧になっていかがでしたか?
園:いやあ、直視できるものではないですね(笑)。でも全部お任せしました。
大島(以下、大):1年間密着させていただいて。父は園さんのデビューのきっかけになった映画祭の審査員だったんですよね。
園:「25歳までに腹をくくらないやつはダメだ」と言われて、「じゃあ、映画監督ということにします」って。あの言葉がなかったらフラフラしていたと思う。
大:父が2013年に亡くなったとき、「大島渚さんみたいな人はもういませんね」といろんな人に言われました。そのとき「近いのは園子温だな」と。犯罪やセックスというテーマも、政治的な発言を堂々とするスタンスも。それでますます園さんに興味を持った。
園:大島渚という監督は世界の巨匠でありながら、日本ではアウトサイダーの位置にある。自分もそう。いや、別に自分を巨匠だとは思ってないけど(笑)。そこに息子さんが「ドキュメンタリーを撮りたい」と。顔もお父さんに似てるし。
大:ははは。
園:聞けば聞くほど「父と子の在り方」も僕に近いかもしれないなと思った。
――大島は園の新作「ひそひそ星」(14日公開)の撮影風景を中心にカメラを回した。宇宙船で人々に宅配便を届ける女性(神楽坂恵)を写した、モノクロームの異色SFだ。
園:構想25年っていうけど、いままで誰もお金を出してくれなかっただけ。
大:福島を想起する「希望の国」(12年)に代表される、震災後の園さんの取り組みが結実している。園さんはアーティストで詩人でもあるけれど、本籍地はやっぱり「映画」にあるんですよ。でも大島渚は意外と本籍地が映画にはなく、むしろ言論にあったと思う。