報告書によると、A氏との不適切な取引は14例。ここに金庫番となっていた欣吾氏が深く関わっていた。そのうち、6例に王将の100%子会社である「キングランド」が関与している。

 A氏を知る人物によると、95年がターニングポイントだという。当時、A氏がオーナーを務める会社は、旧住専の総合住金から132億円の融資を受けていた。旧住専の破たん処理で資金源が断ち切られたことで、返済を求められることは確実だった。

「旧住専からカネを引っ張れなくなり、A氏が頼りにしたのが王将だった。A氏が『なんとか王将で乗り切れる』と話しているのを聞いた人もいる」(A氏の知人)

 実際、A氏のグループ会社が所有する福岡市のビジネス街のビルを、旧住専の債権回収を手掛ける住宅金融債権管理機構(現在の整理回収機構)に競売を申し立てられて、王将が物件を取得したこともあった。

“疑惑”の温床となったキングランドも95年8月に設立されている(05年12月に解散)。王将元幹部が言う。

「王将の現場一筋でやってきた大東氏も、キングランドの社長をしていた時期があって『なぜ不動産を扱う会社を作って、自分が社長なんや』と言っていた。『王将から直接A氏に多額のカネを出すとまずいので、名前が出ないようにトンネル会社にしている』という話を聞いたことがある」

 福岡県内に、A氏から王将側に所有権が移転した不動産もある。89年にA氏が取得した際、資金を用意したのは「キョート・ファイナンス」。戦後最大の経済事件「イトマン事件」にもその名が登場し、京都のフィクサーと呼ばれた山段芳春氏(故人)の会社である。A氏は、山段氏から200億円を超える融資を受けていた。旧住専の巨額債務や山段氏など、A氏の周辺には「裏社会」をにおわせるものが多い。

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