【2】のマイナス金利は、日本銀行や国が企業に対して、現預金の有効活用を本気で求める政策だとみています。

 金利が下がれば、借金して投資しやすくなります。わかりやすい例としては不動産価格があります。3月に発表された公示地価では全国平均が上昇に転じました。3大都市圏に加えて、地方中枢都市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)でも値上がりが続いています。06~07年ごろの「ミニバブル」と比べて、幅広い地域で買われたのがわかります。

 投資家はいま利回りを探しています。マイナス金利で国債や社債は選べない。地価と一緒にリート(不動産投資信託)も高騰し、利回りは下がりました。円建ての金融商品では、もはや株しか残っていません。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が株の運用割合を高めているのは、利回りも理由のひとつではないでしょうか。

【3】の高齢化は、黒船来航からずっと危機に強い日本人に底力を発揮させました。イノベーション(技術や経営の革新)に拍車をかけたのです。

 まず思い浮かぶ医薬品の分野では、例えば塩野義製薬が画期的なインフルエンザ治療薬を開発しました。世界で初めてインフルエンザウイルスの増殖を抑える効果があります。研究開発に投資を惜しまなかった成果でしょう。

 高齢化は労働力の減少も意味します。日本企業はこれを見込んで、効率化や自動化で先頭を走る。産業用ロボットでは世界トップ8社のうち、日本企業が5社(三菱重工業、川崎重工業、安川電機、ファナック、デンソー)を占めます。

――「三つの理由」は最終的に、すべてアベノミクスに結びつく。【3】の高齢化も「一億総活躍社会」と銘打って政策を打ち出している。ただアベノミクスに対しては、サイ氏の見方は慎重だ。とくに【2】のマイナス金利には、「金利と一緒に地価も下がる。そういう逆方向に突き進むことだけはないと考えています」。

 米国株は長期でとらえると、GDP(国内総生産)が年1~2%伸びるのに連動して年4~5%上がってきました。米国人には「株価は上がるものだ」という確固たる信念があります。

 それに対して、日本では「失われた20年」の間、株価が狭い範囲内で上下するだけでした。昨年後半以降も乱高下が続き、日本人はすっかり自信を失っています。でも潜在力を発揮すれば、上昇基調に戻るでしょう。将来は明るいですよ。

週刊朝日  2016年4月15日号より抜粋

[AERA最新号はこちら]