冒険や挑戦を恐れない自由人のように見えて、実はかなりの慎重派。歌でも芝居でもなんでも器用にやってのける印象があるが、「全然。毎回、できないことだらけです。ただ、せっかく私に白羽の矢が立ったなら、お応えできることにはマックスお応えしたいだけです」と、その姿勢はあくまで謙虚だ。
「ただ、別の人格を演じることで、舞台上で自分が解放されていくことは、快感ではあります。楽屋に一歩入って、カツラを一個かぶるだけで、その役になっていく感じは、自分でもわかります。たぶん、“嘘をつく快感”なんですよね(笑)。この衣装を着たら、思い切りわがままになれるとか。それを観たお客様に喜んでもらえたらなお快感だし」
舞台に立ちながら、過去には何度か、「ここは自分の生きるところだ」と確認できた瞬間があったという。
「役を演じながら、スーッて、自分の内側が研ぎ澄まされている瞬間がときどきあるんです。今は誰にも邪魔されないぞ、誰もここには入ってこられないぞって。それから、『へぇ、私こんなこと思うんだ』ってちょっと驚いたりして。切ない役者魂なんですけどね(苦笑)。そういうときは、よっぽど日常に嫌なことがあったのかもしれませんね(笑)」
※週刊朝日 2016年4月8日号