現在、世の中にある職業の多くがAI(人工知能)に取って代わる――。英オックスフォード大のマイケル・オズボーン准教授らが発表したAI時代の職業リストに使った手法をベースに、野村総合研究所は同氏らと共同で研究。日本国内の約600種の職業に関してAIやロボットに代替される確率を試算し、昨年末に公表した。いわば日本版の仕事の「勝敗表」だ。
負け組で目立つのが事務職だ。人工知能学会会長で公立はこだて未来大学の松原仁教授は言う。
「出張の手続きや経費の精算、扶養手続き、確定申告といったルーチンの事務作業が、少しずつAIに取って代わられるのがいちばん現実的です。どの職種でも日本の働く人の多くはそういった事務作業を自身でやっていますが、それだけを専門でやる人はいらなくなるでしょうね」
定型化したルーチンワークが多い秘書や公務員の仕事も危うい。
「私は1日に千通ほど電子メールを受信していますが、必要なメールはそのうち100通くらいです。もう少しで、AIが必要なメールだけを選り分けてくれるようになるでしょう。そうすると秘書の仕事のかなりの部分はAIが代替してくれます」(松原教授)
もちろん、すべてが定型化できるわけではないので臨機応変に対応できる人間も必要だが、これまで5人でしていた仕事が1人ですむようになるというわけだ。コミュニケーションが必要な窓口業務などはAIに代替されにくいとされるが、実際はそうでもなさそうだ。
「窓口や電話業務でも顧客情報や対応ノウハウをデータ化して蓄積できれば、それをAIが解析し、どう対応したらいいか、瞬時に判断できる。人だけである必要はありません」(AIなどが専門の筑波大学システム情報系の大澤博隆助教)
みずほ銀行や損害保険会社MS&ADインシュアランスグループは、コールセンターにAIをすでに導入し始めている。
これまで高度な専門知識と豊富な経験が必要とされていた職業でも、危ない。
例えば医師。米ベンチャーのエンリティック社のAIシステムが検査画像から乳がんを見つける精度は、すでに人間の放射線医師を上回っているという。