伝説の「フィルモア・ウエスト」がロウ・ジェネレーションで再登場
At Fillmore West 10/17/1970 (One And One)
前回、マイルスの新音源が途絶えている旨のご報告をし、マイルス関連アーティストとしてギル・エヴァンスのライヴをご紹介したが、その直後、御大盤が数種類登場、早くも今週からいつものパターンに戻ってしまいます。関連アーティストの新作に関しては、マイルス・ラッシュが一段落したときに改めてご紹介したいと考えています。
さてボブ・ディランのブートレグ・シリーズから20年遅れて始まったマイルスの同名シリーズ。はたして今年もちゃんと発売してくれるのだろうか。去年のヨーロッパ・ライヴ盤をみるかぎり、それほど詳細精緻なリサーチはしていないようだが、そうであるならなおさらデータ調査上、手間暇のかからない音源から優先的に発売していけばいいのではないか。たとえば東西の「フィルモア」におけるライヴの集大成とか。待ってる人、圧倒的に多いと思いますよ。
今回ご紹介するのは、長くジャズ・マスターズ盤の定番として知られていた70年10月の「フィルモア・ウエスト」でのライヴ。何度か再発売がくり返され、それなりに音質も向上の歴史を辿ってきたが、いずれもイマイチの域を抜け出すことはできず、拙著『マイルスを聴けV8』では、総体的な評価として「ブート初期なら許せたが、現在の水準を知った耳に、これはもう要なし」と書かれている。
その「いま一歩のところ」にとどまっていた「フィルモア・ウエスト」ライヴが、よりジェネレーションの若いテープが発掘されたことによって、ここにめでたくワン・アンド・ワンから新装発売された。ただし使用されたテープの内容そのものは先のジャズ・マスターズ盤と同じ、したがって3曲目の《ホワット・アイ・セイ》が不完全ヴァージョンであることに変わりはないが、そこはロウ・ジェネレーションということで、今回はヨシとしてもいいように思う。
この時代のマイルス・バンドは、御大を中心に左右にゲイリー・バーツとキース・ジャレットが並び、まずは御大がカマし、次いでバーツが垂れ流し、それに堪忍袋の緒を切ったキースが奇声を発しながらオルガンとエレクトリック・ピアノを叩きのめすという展開が常態化し、それはそれはボクのような好き者にはたまらんわけであります。ロウ・ジェネレーションであることの差異ははっきり出ています。それではまた来週。
【収録曲一覧】
1 Directions
2 Honky Tonk
3 What I Say (incomplete)
4 Sanctuary
5 Yesternow
6 Bitches Brew
7 Funky Tonk-The Theme
Miles Davis (tp) Gary Bartz (ss, as) Keith Jarrett (elp, org) Michael Henderson (elb) Jack DeJohnette (ds) Airto Moreira (per) Jim Riley (per)
1970/10/17 (San Francisco)