現在、ホルモン補充療法は主に男性更年期障害などの治療として用いられる。サルコペニアへの直接的な治療としてホルモン補充療法をおこなう医療機関はないが、うつや認知症、男性更年期などを対象におこなった結果、付随効果として筋肉量が増加したというケースが報告されている。
さらに、ホルモン補充療法がサルコペニア改善に役立ったと思われる症例もある。
08年7月、神奈川県に住む井上光彦さん(仮名・61歳)は、高血圧で秋下医師が治療に協力していたクリニックに通院していた。
ただ、井上さんは高血圧以外にも、うつ症状や性欲の低下、疲れやすさなどの症状を感じており、ネットを通じて「自分は男性ホルモンが欠乏しているのではないか」と疑うようになっていた。
測ってみるとテストステロンの値は3.4だったため、テストステロンの皮下注射による補充療法を開始。半年後にはテストステロンの値が18.8まで上昇し、筋肉量も6キロ以上増えていた。
「現段階では、サルコペニアにテストステロンを補充することがどの程度有効かわかりません。ただ、男性更年期などの治療目的でテストステロンを補充したときに筋肉量が増えて、結果としてサルコペニアを改善したケースは散見されます。将来的に、ホルモン補充療法がサルコペニアの予防や治療の一つの柱になる可能性はあるでしょう」(秋下医師)
今後の研究に期待がかかる。
※週刊朝日 2015年10月2日号より抜粋