丹野さんも合唱を始めて音楽に目覚めたという。トレーニングは楽しくないと続かない、と。同感だ。1時間半があっという間に過ぎて、休憩に入った。ぼくは丹野さんに、

「お話が上手ですね」

 と言うと、ニッコリと、

「車のディーラーをしていたので、お客様とよく話していましたから。『家族の会』でも話す場面は私が……」

 丹野さんはいつも笑顔で明るい。あのキャラがうらやましい。見習うことができればなあ。あと1時間だ。第2部では、佐藤充博さんのウィットに富む話術が笑いと拍手をとった。

 佐藤さんは幻視が出たり、手足の震えが出たりする症状が進行し、レビー小体型認知症と診断された。さまざまな症状から地域で孤立することも多かったが、やりたいこともあった。

 その一つが師範の免状も持っていた書道である。録画映像では、地域の後輩から頼まれてお品書きを書き、佐藤さんが好きな「風」と「道」の文字も筆で書いた。その書の感想を聞かれると、当のご本人が、

「なかなかいいね」

「感動した。もっと書いて展覧会もやりたい」

 トツトツとした東北なまり。ちっとも尊大じゃない。

「佐藤さんに私が教えられたことはたくさんある」

 主治医の紺野敏昭さんの弁がよくわかった。ぼくも朝田さんからレビー小体型認知症のごく初期ではないか、と言われたことがある。

 レビー小体型認知症の特徴を朝田さんが説明するのを聞いていると、幻視だけは当てはまらないが、「認知機能の変動(日によって記憶障害が大きく違う)」「手足の痺れや歩行障害」「睡眠時の異常行動(大きな寝言や奇声)」「自律神経の異常」など思い当たることはいくつかある。脳の後頭葉に血流の悪いところがあるのも心配材料だ。

 症状は今のところ進んではいない。でも、いつかは……? 不安はある。そうした中で自分ができることは何か。探し続けよう、それしかないんだ。

週刊朝日 2015年9月25日号より抜粋

[AERA最新号はこちら]