ライヴ・イン・ペスカラ'73
ライヴ・イン・ペスカラ'73

伝説のペスカラ・ライヴの最終回答盤
Live In Pescara '73 (One And One)

 年季の入ったマイルス者およびブートレグ者にとって、1973年7月16日、イタリアはペスカラにおけるライヴは、出ているような出ていないような、聴いているような聴いていないような、微妙な立場に置かれていた。

 事情が飲み込めない人には、拙著『マイルスを聴け!』のいくつかのヴァージョンをご覧いただきたいと思うが、もちろん出ないよりは出たほうがよく、しかしその出し方・出方がいまひとつウーンという、じつにじれったい状況に長く甘んじていたのです。そして年季の入った人たちほど、「もうペスカラはこれで精いっぱいだな」との諦観と大人の態度をみせ、この原稿を書いているマイルス者も半ばあきらめ、しだいにその存在を忘れるようになりつつあった(ちょっと冷たすぎませんか)。

 そこにビッグな朗報が届いた。ついにペスカラ・ライヴの究極盤が出るというではないか。そして現実に出た。おーーーこれぞペスカラから届いた最終回答というものだろう。全国マイルス者およびブートレグ者のみなさん、これまでチョロチョロ買い集めていたペスカラ・ライヴ盤を捨てましょう! もうイランのです。これさえあれば。これを朗報といわずして何を朗報というのでしょう。とにかく聴いてください。

 内容に関しては、それこそ拙著をご覧ください。なにしろ1973年という時期そしてサックスがデイヴ・リーブマンですから、当方がどのように燃えているか、改めてここでご披露するまでもないかと思われます。そう、これもまた73年マイルス・バンドのベストであり、同じペスカラ・ライヴでも、これまでとまったくちがうペスカラ・ライヴなのであります。

 ここで、再度この場を借りて、ソニー・レガシーの再発チームに言っておきたいと思います。「何度も同じことばかり言うな」という声も聴こえないわけではありませんが、こういうことは何度も何度も言っておかなければならのです。さあ、もういいかげん正式に公式に本腰を入れて73年バンドを総括しようではないか。例のブートレグ・シリーズもその後のリリース情報がなく、そんなことで許されるとでも思っているのでしょうか。ボブ・ディランの同名シリーズを見習って、もっとガンガン攻め立ててほしい。ひとつ、よろしくお願いいたします。と最後は懇願するかっこうになってしまいましたが、これほどの財宝を放置したままというのは、やはり犯罪的行為だと思うのであります。それではまた来週。

【収録曲一覧】
1 Turnaroundphrase
2 Tune In 5
3 Untitled Tune
4 Ife
5 Tune In 5
(2 cd)

Miles Davis (tp) Dave Liebman (ss, ts, fl) Pete Cosey (elg, per) Reggie Lucas (elg) Michael Henderson (elb) Al Foster (ds) Mtume (per)

1973/7/16 (Italy)