そりゃふと見れば、MCコンビのシルエットもどこか丸くなっていて、中年度を増したのはいなめない。

 だからもう、「さあ、皆さん。おまんたせいたしました!」などと、何を狙ってそんなことを口走ってしまったのか、どうしたんだ織田裕二!……と、お茶の間を狼狽させるような発言も、そんなにはしないはず。

「なぁ~にやってるんだよ! タメ!!」と、予選落ちした為末選手にしたみたいに、いきなりタメ口も叩かないはず。

「ドキドキさせやがって、このヤローッ!!」と、室伏選手に私情丸出しにしたり、「すみません! ダ~メだ、現場が落ち着かない!」と、テレビカメラ無視して、後ろでやってる競技に見入ったりしないはず。

 そもそも「キターッ!」は目薬のCMのセリフで、「世界陸上」で連呼されてる訳じゃない。それでも私たちは、織田裕二の「世界陸上」を見てしまうのだ。どこかに「キターッ!」がありそうな気がして。どこかでひっくり返って裏返しになったような織田裕二が見られるような気がして。その尽きることない陸上馬鹿っぷりを見届けるために。

週刊朝日 2015年9月11日号

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?