
マイルス先生お休み中の関連音源ご紹介:ビル・エヴァンスの巻
Yale School Of Music, New Haven 1980 / Bill Evans (Cool Jazz)
マイルスの新音源盤が未着の場合のみお届けしている、マイルス関連ミュージシャンの新音源ご紹介。これが意外と好評のようで、だったら毎回2本立てでいこうかなどと調子に乗っている今日この頃ですが、この種の音源ばっかりは発売の予定が見えず、どうしても現物が届いてからの勝負となります。
今回はビル・エヴァンスといきましょう。マイルスとエヴァンスといえば、なんといっても不滅の名盤『カインド・オブ・ブルー』で知られるところではありますが、マイルス以外の晩年の音源も聴いていただきたい、いついつまでも『カインド・オブ・ブルー』ではないでしょうと憎まれ口も叩きたくなるほど、それはもう『カインド・オブ・ブルー』に一極集中しているわけですが、それはそれ、これはこれ。たまにはエヴァンスの晩年、しかもソロ・ピアノでも聴いてみるのも悪くないでしょう。
録音された時期は、エヴァンスが他界する約半年前。場所はニュー・ヘヴンにあるエール音楽学校(大学)の講堂。基本的にはエヴァンスだけのソロ・ピアノですが、最初の《ワルツ・フォー・デビー》のみ、同校のオーケストラとの共演となっています。いかにも特別な夜の特別なコンサートといった趣ですが、晩年のエヴァンスがこのような意欲的なプログラムに出演していたことなど、まったく知りませんでした。
最大の話題は、やはり《ワルツ・フォー・デビー》でしょうか。この演奏には、前述したようにオーケストラが加わっていますが、そのせいでしょう、いつもの落ち着いた《デビー》に比して明るく、かなり快活です。とても晩年とは思えない若々しい演奏といってもいいでしょう。
その他の演奏に関しては、とにかくソロ・ピアノですから、「いつものエヴァンス」がたっぷりと堪能できます。ただし音質面でややバラツキがあり、音にうるさい人には不向きのアイテムといえるでしょう。なにしろソロ・ピアノですから、音の問題は隠しようがありません。
とはいえ一度聴き出したら、ついつい聴き進んでしまう魔力がエヴァンスの演奏にはあり、その強度と磁力は晩年に至ってもまったく衰えていません。《ノエルのテーマ》《バット・ビューティフル》《フォー・オール・ウイ・ノウ》と、レパートリー的にも問題ないでしょう。エヴァンスの熱狂的なマニアの方にお勧めします。それではまた来週。
【収録曲一覧】
1 Waltz For Debby
2 Noelle's Theme
3 Bill's Hit Tune
4 But Beautiful
5 The Two Lonely People
6 Reflections In D
7 I Loves You Porgy
8 For All We Know
Bill Evans (piano solo)
Yale Jazz Orchestra (add. only 1)
1980/2/22 (New Haven)