ゼネラル・モーターズ(GM)の副社長、ペプシコの上級副社長を経て、北米トヨタの副社長に転じた。トヨタ常務役員への華麗なるステップは、章男社長肝いりの人事だという。

 だが、日本での働きぶりはこれからという矢先だった。

「10分間ミーティングというのがありまして、ハンプさんと部門全員が話す時間が設けられていました。ですが、ハンプさんは日本語が話せなくて。英語が話せる社員はハンプさんと少し話していましたが……」(同社関係者)

 章男社長も神妙な面持ちで、こう言った。

「性別、国籍すべてを排して、適材適所の配置を進めてきました。ハンプ氏のように海外の役員が日本に常住するというのは初めてです。ハンプ氏をサポートする準備が会社として、多少不足をしていたのかなと反省しております」

 だが、どんな理由にしろ、麻薬は許されるものではない。企業統治に詳しいペイ・ガバナンス日本の阿部直彦氏は言う。

「一般的にグローバルの大企業では、従業員に、ドラッグフリー(麻薬を摂取していないこと)を含む従業員行動憲章に違反していない旨にサインしてもらいます。ドラッグを使っていた場合などは解雇できる企業が大多数。文化も国籍も違うのに雇用制度が日本のままというのは無理があります」

 広報に確認したところ「サインしていたのかどうかわかりません」との回答だった。トヨタブランドは大きく傷ついた。

(本誌・永野原梨香、牧野めぐみ、一原知之、上田耕司/横田 一)

週刊朝日 2015年7月3日号