統計では、親戚以外の第三者が後見人になるケースが増えている。00年には後見人の9割以上が配偶者や子どもなどの親戚だったが、14年には35%にまで下がり、専門家などの第三者が65%を占めるようになった。
背景には、親戚が後見人になると、本人の財産を自分の財産のように扱ってトラブルになるケースが多くなったことがある。そのため、家庭裁判所が選任する法定後見人では第三者が増えてきた。
第三者で増えているのが、弁護士(前年比18.6%増)と司法書士(同19.5%増)だ。ただ、弁護士や司法書士の一部には、後見人になることをビジネスと考えて割り切っている人もいるという。制度に詳しい関係者は、こう話す。
「ある弁護士は、『後見制度というのは依頼人に会わなくていいからラクな仕事だ』と豪語していました。仮に月に2万円程度の報酬でも、10人の後見人になっていれば毎月20万円の収入になる。高齢者を守る制度だという意味がまったくわかっていない」
首都近郊に住む古谷英治さん(仮名・70代)も、弁護士の後見人に悩まされている一人だ。
古谷さんは子どもがいない。妻に先立たれたあと、軽度の認知症と診断されたこともあり、弁護士の後見人がついた。
ただ、古谷さんは今でも日常生活を一人で送ることができ、一見しただけでは認知症と診断されているとは思えない。それが、この弁護士は古谷さんの通帳を取り上げてしまった。さらに、貯金の残高を照会しても教えてくれない。古谷さんは元公務員で毎月20万円程度の年金収入がある。にもかかわらず、後見人から振り込まれる生活費は毎月7万円だけ。付添人がいれば旅行にも出かけることができるのに、手元に現金がないために遊びに行くこともできないという。
「妻の資産だったアパートも、知らない間に売却されていました。弁護士は口頭で私に確認したと主張していますが、そんなことはありません。本当に生活に困っています」(古谷さん)
(本誌・西岡千史)
※週刊朝日 2015年6月26日号より抜粋