「早く質問しろよ」──。安全保障関連法案をめぐる国会審議が白熱する中、安倍晋三首相の振る舞いが物議を醸している。6月1日、首相は改めて謝罪したが、“子供のけんか”を思わせる応酬は、専門家の目にどう映ったのか。その心理を読み解いてもらった。
「早く質問しろよ」。いら立った様子で安倍首相がそう叫んだのは、5月28日。かつて小泉純一郎元首相に「ソーリ」節を繰り返した辻元清美衆院議員(民主党)の質疑だった。3分間ほどかけて、中東での「機雷の掃海」が軍事行動の一環とされてテロリストに狙われたり、自衛隊員に死傷者が出たりするリスクが増えるといった指摘をし、「ちょっとだけよと行って、いつも大きな戦争に広がっていってるわけです。ですから総理はこうもおっしゃってますよ……」。そう言ったところだった。
首相の発言に辻元氏はしばらく沈黙。あぜんとした顔で、こう切り返した。「ご自身の答弁は延々とされてきたんじゃないですか」。
その少し前には、中谷元・防衛相への質問にもかかわらず自ら手を挙げ答弁席に向かう安倍首相を、「ソーリ、落ち着いたほうがいいですよ。どっしりしてください」と辻元氏がたしなめて、失笑が起きていた。
首相のヤジという敵失を見逃さず、“見せ場”に変えた辻元氏を「けんか上手」と評するのは臨床心理士で『アイドル政治家症候群』(中公新書ラクレ)などの著書がある矢幡洋氏だ。