ザ・リアル・ライフ/パコ・セリー
ザ・リアル・ライフ/パコ・セリー
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晩年までザヴィヌルを支えたドラマーの12年ぶりのリーダー作
The Real Life / Paco Sery (Abribulles)

 ジョー・ザヴィヌルとの出会いによってキャリア・アップし、晩年までザヴィヌルを支えたドラマーがパコ・セリーだ。経歴が興味深い。1958年にフランス共同体内の自治国に昇格したコートジボワール生まれ。同国は1842年にフランスの支配権が確立して以来、100年以上にもわたってフランス領下にあり、1960年になって完全独立を果たした歴史的経緯がある。国情が転換期を迎えていた中で、セリーは17人きょうだいの大家族で育つ。10歳から手製のドラムスを叩き、独学で習得した。転機になったのが80年にエディ・ルイスの招きでパリを訪れたことで、絶好の舞台を得て持ち前の才能を開花。同地に定着し、モンティ・アレキサンダー、ニーナ・シモン、マヌ・ディバンゴ、クロード・ヌガロらジャズ、ワールド、ポップスと、多彩なジャンルのミュージシャンと共演を重ねてキャリア・アップ。晩年のジャコ・パストリアスとのコラボレーションや、フランスのバンド“シクサン”のメンバーとして80年代半ばから10年間活躍したのは、セリーのジャズ/フュージョン界での実績と言える。その後ザヴィヌル・シンジケートに参加して、セリーの名はより広く知られるようになった。

 セリーは2000年に初リーダー作『Voyages』(EMI Music France)をリリース。これは前年にフラヴィオ・ボルトロ(tp)の同レーベル作に参加したことの発展形と思われる。レーベル・メイトのボルトロ、ステファノ・ディ・バティスタ、エリック・レニーニ、前述のディバンゴ、ダイアン・リーヴスを迎えて、自身は打楽器ばかりでなくギター、シンセ・ベース、プログラミング、作・編曲とマルチな才能を発揮。ザヴィヌル・シンジケートを想起させるアフリカ色の濃いサウンドは、ナチュラルなパワーと柔軟性を強烈に体感させてくれる。

 本作は実に12年ぶりとなるセリーのリーダー第2作だ。2012年はセリーを含む元ザヴィヌル・シンジケートのメンバーが中心となって、偉大なリーダーの音楽を継承するザ・シンジケートの初作をリリースし、7月には来日公演も行った。そのような流れでの本作は、同僚や多数のゲストを起用して、前作の延長~発展と思えるカラフルなサウンドを展開。前奏曲#1から#2に進むと、早くもザヴィヌル譲りの祝祭空間が現出して気分が高揚する。ミュート・トランペット、チョッパー・ベース、ラップを入れて80年代マナーで帝王へのトリビュートを表明する#3、アドリアン・フェロウをフィーチャーして共演歴のあるジャコに捧げた近未来的な#4、ジョニ・ミッチェルが晩年のチャールス・ミンガスとの共演作でジャズ歌手としてのスキルの高さを示したナンバーを再構築した#9と、全編でセリーの豊かなアイデアが炸裂。女性の日本語歌唱曲#5の謎を含めて、“ヴォイス”をテーマにした音作りにさらなる可能性を感じたのだった。

【収録曲一覧】
1. Intro Chabada Danse
2. Chabada Danse
3. Miles In The Jungle
4. Wassa Solo
5. Intro Mai Blues
6. Mai Blues
7. I Say Monkey
8. Paco Shuffle
9. The Dry Cleaner From Des Moines
10. Move Your Hips And Whip It
11. Futur
12. Disco Danse Awaia
13. Mai Et Les Trois Petits Lapins Part 1
14. Mai Et Les Trois Petits Lapins Part 2

パコ・セリー:Paco Sery (ds,per,vo,key,vocoder,g,el-b) (allmusic.comへリンクします)
アドリアン・フェロウ:Hadrien Feraud(el-b)
エミール・パリジャン:Emile Parisien(as,ss)
エリック・レニーニ:Eric Legnini(p)
2012年作品

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