はたして、「蛮勇」と切り捨てていいのか――。
フリージャーナリストの常岡浩介さんは、人質事件の政府の対応について「疑問ばかりで辻褄(つじつま)が合うものが何一つない。にもかかわらず亡くなった後藤健二さんを非難している。安倍晋三首相が訳のわからないことを言って、無駄に敵意をかき立てる」と批判する。
衆参の予算委員会では、後藤さんが拘束されたと政府が把握したのは12月3日、殺害予告が出た1月20日までは「イスラム国」に拘束されたと特定できなかったと明かされた。
「イスラム国に誘拐されて処刑、あるいは解放されたケースでも15人いる。各国に協力を求めればわかるはず。たとえ確認が取れなかったとしても、推定できないとおかしい。(官邸が)『知らなかった』と言うのは、『知ろうとしなかった』のではないか」
常岡さんは、一連の事件報道でテレビ番組に出演したが、現場に自粛の空気を感じたという。
「あるテレビ局からは『政権批判はしないでください』と言われました。後藤さんが殺害された動画が公開された後には、番組から『助けられたはずだった、という話はしないでください』と言われて、出演を見合わせたこともありました」
いま、「自己責任」「取材に行くべきでない」と、後藤さんや戦場に行くジャーナリストに厳しい声があがっている。
「国民に判断材料を提供するためにも、戦場などの現場取材は必要。事件の失態隠しをすれば、今後も同じことを繰り返すことになります」(常岡さん)
報道カメラマンの横田徹さんも、こう話す。
「取材の場所やアプローチ、危機管理は今まで以上に気をつけないといけない。ただ、これで萎縮するのは、後藤さんだって望んでいないと思いますから」
※週刊朝日 2015年2月20日号