輸入飼料のコストがかさんだ農家からは悲鳴が聞こえる (c)朝日新聞社 @@写禁
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 円安水準が続く為替相場。“円安否定派”の静岡大学名誉教授(経済統計学)・土居英二さんは、家計への負担増を生み出すという。

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 改めて試算をして驚きましたが、消費増税が家計に与える影響よりも、円安による負担増のほうが、はるかに大きいのです。試算では、最近の原油安を織り込んでいます。

【表1】は、円安による輸入物価高騰が家計に与える影響を年収別に試算したものです。第2次安倍政権発足の2012年の年間対ドル平均円レートの79.8円を基準としています。現状の1ドル=120円だと、年収600万円の世帯で、年間16.7万円の負担増。これは、消費増税による負担増8.7万円の約2倍になります。1ドル=140円になると25万円で、消費増税の約3倍です。もちろん、家計への影響は円安と消費増税の両方がかかってくるので、120円の場合、負担額の合計で25.4万円、140円では33.7万円もの負担増になります。

 品目別では、燃料費高騰により、「ガス代」の上昇率(12.5%)が最も高く、「電気代」(9.7%)が続きます。食料品では、「油脂・調味料」(8.5%)や「肉類」「乳卵類」(ともに8.2%)の値段が上昇しています。いずれも、生活に不可欠なものばかりです。

 また、【表2】を見てください。これは年収別の「負担率」を示したものです。120円で比べると年収200万円の世帯は4.9%なのに対して、年収800万円では2.4%になっています。つまり、年収が低いほど家計への負担は重く、年収が多くなるほど軽くなるという「逆進性」が生じているのです。これは消費増税と同じ構図です。格差社会の亀裂は円安でも広がってしまうのです。

 アベノミクスの効果で、株式相場は活況になっていますが、円安による家計の負担増で、国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費が冷え込んでしまえば、実体経済は決して回復しません。円安がこのまま進めば、景気が悪化することは目に見えています。

■円安による物価上昇と家計負担

【表1】年収別の負担額(2人以上世帯)
年収 年間負担額(万円)
為替レート(1ドル) 120円/130円/140円/150円/消費増税5%→8%
200万円 9.8/12.2/14.7/17.1/5.0
300万円 12.2/15.3/18.3/21.4/6.3
400万円 13.9/17.3/20.8/24.2/7.2
500万円 15.5/19.3/23.1/27.0/8.1
600万円 16.7/20.8/25.0/29.1/8.7
700万円 18.5/23.1/27.7/32.2/9.7
800万円 19.2/23.9/28.7/33.4/10.1
1000万円 21.3/26.6/31.9/37.3/11.4
1500万円 26.6/33.3/39.9/46.5/14.5

【表2】年収別の負担率(2人以上世帯)
年収 年収に対する負担率
為替レート(1ドル) 120円/130円/140円/150円
200万円 4.9%/6.1%/7.3%/8.6%
300万円 4.1%/5.1%/6.1%/7.1%
400万円 3.5%/4.3%/5.2%/6.0%
500万円 3.1%/3.9%/4.6%/5.4%
600万円 2.8%/3.5%/4.2%/4.8%
700万円 2.6%/3.3%/4.0%/4.6%
800万円 2.4%/3.0%/3.6%/4.2%
1000万円 2.1%/2.7%/3.2%/3.7%
1500万円 1.8%/2.2%/2.7%/3.1%

※表はいずれも土居英二さんが作成

週刊朝日 2015年1月23日号

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