最近、地方だけでなく、都市部でも木造建築が増え始めている。これまでの「コンクリートジャングル」が「ウッドジャングル」になりつつあるのだ。
これには二つの大きなきっかけがある。2000年に施行された「改正建築基準法」と、10年に施行された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」だ。この二つの法律によって、木造建築の導入が促された。
背景には、日本の林業への危機感がある。戦後造林された人工林は、高度経済成長期に輸入材に追いやられて木材価格が下落。誰も森林の手入れをしなくなった。日本の国土の約7割は森林なのに、木材自給率は3割以下をさまよっている。
林業の衰退は、木造建築自体が減ったことも一因だ。
「戦後のトラウマですね。日本には、『不燃でなくては』という、一種の木造アレルギーがある」
そう話すのは、音羽建物の塚本平一郎さん。木造には耐火という課題がつきまとう。
しかし、ここ数年で鹿島や竹中工務店は、耐火基準をクリアした集成材を開発。新技術を使った大型木造建築が実現している。残るはコストの問題だ。
木造建築の第一人者である東京大学生産技術研究所の腰原幹雄教授はこう指摘する。
「『鶏が先か、卵が先か』。新技術は活用されて初めてコストが削減され、普及します。お金のかかる新技術こそ、公共建築で採用すべき」
木造新時代は、いま幕を開けたばかりだ。
※週刊朝日 2014年9月19日号