情報収集能力の高さから秘密警察のような「後藤田機関」が存在するとのうわさも絶えなかった。政治アナリストの伊藤惇夫氏は本人に真偽を尋ねたところ、「そんなものはあり得ない」と一蹴されたという。

「確かにそのとおりで、黙っていても現役やOBの警察官などから情報が入るんです。大事なのは後藤田さんが情報中毒にならなかったことでしょう。情報に振り回されず、冷静に内容を見定めていました」

 評論家の佐高信氏は100点満点をつけたが、「本当は120点にしたかったぐらいです」と言う。

「部下にとって最も難しく、最も重要な仕事は上司の誤りを正すことです。イラン・イラク戦争でペルシャ湾の機雷掃海が問題となり、中曽根康弘首相は自衛隊の海外派遣を目指しました。それを後藤田さんが体を張って止めた。この飛び抜けた“諫言(かんげん)力”は評価に値すると思いますね」

週刊朝日  2014年8月8日号より抜粋