孫が祖父母を介護する――。そんな時代が、やってきたのだろうか。

 日本ではいま65歳以上が4人に1人に達している。高齢者は今後も増え続けるなか、1人のお年寄りを少人数で支えねばならない「肩車型」は年金と同様、介護でも当てはまる。

 だが、その実態を示す詳しいデータはほとんど見当たらない。

 国は12年の就業構造基本調査で、初めて介護をしている人の数を年齢別に調べた。それによると30歳未満で約18万人、30~39歳で約33万人。しかし、「孫」であるかは不明だ。

 そこで本誌は今回、30代までの「孫」で、介護を必要とする祖父母がいる男女500人にウェブアンケートを実施した。過去も含めて「介護している」は106人で2割強だった。このうち、一番よく世話している人を「自分」と回答したのは10人。内訳は20代以上の男性6人と女性4人で、うち8人が未婚だった。

 若者介護の実態を調べている成蹊大専任講師の澁谷智子さんは「祖父母の介護にかかわる孫たちは、社会の高齢化とともに増えているはずだ」と話す。英国ではすでに「ヤングケアラー」と呼ばれる18歳未満の介護者の支援が進んでいるが、その研究をきっかけに、澁谷講師は日本での調査に取り組んでいる。

 そもそも日本は「介護は家族が担う」という考え方が依然として根強い。

 実際、「同居の家族による介護」が全体の64%と、「事業者」「別居の家族」をはるかに上回っている(10年国民生活基礎調査から)。だが、共働き世帯が増える今、「専業主婦が介護を担う」という従来の構図はもはや成り立たない。さらに「ひとり親世帯」や単身者も急増している。

「妻の収入が家計の大きな割合を占める場合、自分の親や義理の親たちの介護が必要になっても、簡単に離職できない。そんなときの合理的な応急処置として、孫が『とりあえず』と手伝うことから始まり、祖父母の状況が重度化していくなかで、介護から離れられなくなるケースは今後、増えていくと思います」(澁谷講師)

 介護が6~7年に及ぶケースも珍しくない。

「あくまで個人的見解ですが、短期的には合理的な選択だとしても、親が定年してしまうと家族の収入は激減する。孫は介護を担ったことで自分のキャリアを築けなかった場合、その後の人生設計にも影響は出てきます」(同)

週刊朝日  2014年7月4日号より抜粋