今年はゴジラがスクリーンに登場してから60年のメモリアルイヤー。7月25日にはハリウッドが手がけた最新作「GODZILLA ゴジラ」が全国の劇場で封切られる。

 1971年に公開された第11作「ゴジラ対へドラ」でメガホンを握り、最新作でもエグゼクティブプロデューサーの一人に名を連ねる映画監督の坂野(ばんの)義光氏(83)は、「第1作が強烈だった」と原点を振り返る。

 54年公開の第1作「ゴジラ」は、同年に起きた第五福竜丸船員の被ばく事件をきっかけに作られた。

「核実験によって太古の眠りから目を覚ました怪獣が、東京を破壊するという映像表現に心を動かされました。戦争の記憶がまだ生々しく残っていた当時の日本人にとって、恐ろしかった空襲や原爆の象徴として受けとめられた一面もあった。第1作は961万人の動員数を記録した、国民的な映画となりました」

 ゴジラの根底にあるのは文明批評の精神だ。

 50年代後半から60年代にかけて、ゴジラシリーズはさまざまな国に輸出され、日本にとって大きな外貨獲得手段の一つにまでなった。

 
 70年代以降、日本の映画産業が衰退を迎えてからも、怪獣映画の代名詞として映画ファンから愛され続け、2004年にはハリウッドの殿堂入りを果たしている。

「ゴジラの姿は自然界にはない抽象的なデザインです。そんなところが海外の人にとっては魅力的に見えるのかもしれません」

 役者が着ぐるみの中に入って怪獣を演じる「スーツプレイ」も海外では例が少なく、斬新な表現として受けとめられているという。

「私が監督を務めていたころ、ゴジラの顔の部分はリモコンで動かしていたのですが、胴体に入った役者さんとのマッチングが大変でした。ヘドラを倒した後、ゴジラが人間にメッセージを語りかけるように振り向くシーンは、とてもうまくいったと思っています」

 これまでに日本で製作されたゴジラは、全28作すべてスーツプレイで演じられてきたが、最新作のゴジラはCGで描かれている。

「スーツプレイがないのは仕方がありません。技術は新しくなっていくものです。ハリウッド側にゴジラの世界観を壊さないような条件を提出し、最新作では『なぜゴジラが生まれたのか』という原点に立ち戻っています。3Dの臨場感も素晴らしく、大傑作です」

週刊朝日  2014年6月27日号

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